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想定している読者
この記事は、次のような方に向けて発信しています。
・ベトナムで人材募集をしているがなかなかうまくいかないと悩まれている管理者、人事担当の方
・これからベトナムで人材採用をする予定で、採用戦略を考えたい方
結論
ベトナム人(特にワーカー、オペレーターと呼ばれる職位の方)に好まれやすい会社には、次の4つの傾向があります。これらの条件を満たしている会社や組織は、採用がとてもスムースです。
反面、優位性がなくマイナスイメージがついてしまうと、採用がしづらくなってきます。
・管理者と従業員の人間関係が良い会社
・職場の物理的環境が良い会社
・給与待遇が良い会社
・新しい会社
常に全ての項目に対して優位性を保ち続けるのは困難です。
特に「新しい会社」というのは、時間が経てば必ず優位性が薄れてきますね。
重要なことは、どれか一つで勝負しようとせずに、これらの要素の総合ポイントを高めることだと考えています。
また、これらが採用のための万能条件ではありませんが、もし採用で困っているけれど解決の糸口が見えないという様な場合、これらの項目から状況を分析することで戦略の方向性を見出しやすくなります。
一つ一つの項目の意味合いは、それほど難解ではないと思いますので、この記事で伝えたいことの本質は以上です。
以下は、私自身のこれまでの経験を交えて説明します。
人材を採用しやすい会社の傾向
結論のところで書いた通り、人材を集めやすい会社の傾向として次の四つがあります。
・管理者と従業員の人間関係が良い会社
・職場の物理的環境が良い会社
・給与待遇が良い会社
・新しい会社
こうして文字にして書くと、「そんなの、言われなくても分かってる」とガッカリされてしまうようなことかもしれませんね。それに、これはベトナム人に特化した内容では無く、どの国でもどんな組織においても当てはまることのようにも思われます。
しかし、実際に人材採用に行き詰ってしまった時というのは、意外と打開策の切り口を見つけにくいものです。
実際に私が人材採用で困った時も、そうでした。
私の場合は次ような状況に陥りました。
ある時期に、20名強の社員が退職しました。その時、会社設立から4年ほどが過ぎており組織の規模は100名ほどでしたが、同時期におおよそ 20%の人が抜けてしまったのです。組織の20%の人が同時期にいなくなるというのは、会社運営に深刻な影響を及ぼします。
そして、その補填が全くスムースに進まないのです。
過去にも退職者が出たり、生産体制の強化で増員するときは何度もありましたが採用は非常にスムースで、なかなか採用ができないということで困ったことはありませんでした。ところが、その時は募集をすれども、人が全然集まらず、やっと採用しても会社に来ない、来てもすぐ辞める・・・
それでも仕事の量が減るわけではないので、残っているメンバーにかかる負担も日に日に蓄積される。
早く補填しないと、今のメンバーも疲弊しきってしまう、一体どうすればいいんだろう、
以前は人が辞めることがあっても、すぐに補填できていたのに・・・
思い出しても、締め上げられるような感覚を覚える苦しい状況です。
藁をもつかむ思いで、いろいろな方面に話を聞いて、自社の問題点を分析するための情報を集めました。
特に、創業時からワーカー募集の協力をしてもらっていた工業団地の人材紹介部門の担当の方からの意見は大いに参考になりました。採用がスムースだった頃から自社の状況を見てくれていたので、何が変わってしまったのかについて客観的な視点から意見をいただけました。
そうして集約されたものが、上の4つの項目でした。
管理者と従業員の人間関係が良い会社
管理者と従業員の信頼関係が構築されているか、気楽に意見を出し合える状況にあるか、ということですが、別な表現としては「風通しが良い社風」という言い方もできます。
この真逆の状況として、管理者が恐怖政治を強いていて従業員が思っていることを全く自由に表現できない状況を想像してもらうと、イメージしやすいかと思います。
弊社が困った時の状況ですが、ベトナム人従業員との関係についてはかなり意図的に対策していたこともあり、プラス要因として見ることが出来そうでした。実際に工業団地の担当者も、これは問題ないと判断してくれていました。
ベトナム人従業員との人間関係をどの様に構築するのかについては、押さえておくべきポイントがあるのですがこれについての考察は、また別の記事でご紹介します。
職場の物理的環境が良い会社
快適な作業環境であるかどうかについての内容です。
暑い国で野外で直射日光を浴びながら重いものを持ち、泥や埃などが多い環境よりは
清潔な作業環境、空調が効いている環境の方が好まれやすいのは理解できると思います。
弊社の場合は、基本的に空調が効いた作業空間で、加工油も無く、生産している機械も人の口に入るものを扱う機械のため全体的にクリーンで作業環境は問題なさそうでした。工業団地の担当者からも、これは優位性があるとお墨付きを頂きました。
給与待遇が良い会社
これについては当たり前であるものの、少し注意が必要です。
他の条件と比較しても直接的に生活に大きなインパクトを与えるので、ここが不満材料となりやすく、この条件が唯一無二のものとして捉えられやすいのですが、実際には唯一無二の条件ではありません。
弊社でも過去に給料額に不満があり、給料が高い会社に移った社員がいましたが、しばらくして連絡があり、戻りたいと言ってきた社員も数名いました。理由を聞くと、やはり給料が高いところは体力的に相当に負荷が大きいということでした。このことから、給与が高いというだけでは十分な条件にはなり得ないと言うことができます。
工業団地の方と話していて、当時の弊社状況は給与面で問題があることが分かりました。
創業当初は、期せずして弊社の給与額は周囲企業よりほんの少しですが、高め設定になっていたそうです。しかし数年経つうちに状況が変わり、他の周辺企業と比較して少し安くなっているとの話でした。そして尚悪いことに、給与が低めの状況が続いていたことで、この会社は給与が低い、と言う噂が周辺に広まってしまっていたのです。
ここに、私自身が気付いていなかった大きな問題点がありました。
新しい会社
いわゆるスタートアップ企業です。スタートアップ企業の場合、全ての従業員が未経験のところから仕事を始めるのでリーダーなどの職位につけるチャンスが多くなると考えられます。
すでに組織が出来上がっているところに入るより、横一線に並んでスタートする環境の方が自分に回ってくるチャンスも多くなる、つまり、収入を上げるチャンスが他よりも多い、という論理です。
弊社の場合、困り始めたのは創業してから4年目に入っていました。その期間、常に周囲には新しい企業がどんどん工業団地に入居しており、この項目に対しての弊社の魅力はすでに色あせてしまっていました。
弊社に必要だったもの
以上から、弊社の当時の状況を分析すると、下の様になっていたことが分かりました。
・管理者と従業員の人間関係が良い会社 ⇨ ○
・職場の物理的環境が良い会社 ⇨ ◎
・給与待遇が良い会社 ⇨ ×
・新しい会社 ⇨ △
弊社の場合は、給与待遇、福利厚生面の見直しを行い、このバランスを改善させることで、ひとまずはなんとか窮地を抜けることができました。
他に倣うのでは無く、自社戦略を持ちましょう
通常、ワーカー、オペレーター職位の人は、会社の近辺に住んでいる人たちで構成されているケースが殆どです。
そして、数年単位で職場を移りかわることが普通の文化であるという背景から彼らは他の会社にも情報ネットワークを多く持っていますので、どの会社がどの様な状況であるかの情報が自然と流れてくる様です。
ネットワーク内では良い情報も悪い情報も出回りますが、注意が必要なのは、それが「噂」という形で流れるということです。「噂」は人から人へ伝わる中で形を変えていくため、得てして事実を正確に反映していないことが通常です。しかし、その事実関係を彼らが検証することはできないため、あたかも事実であるかの様に伝わります。
良い噂が流れてくれると良いのですが、悪い噂が流れてしまうとその印象を払拭するのに苦戦を強いられることになります。事実、弊社設立当初は4項目が全て優位になっていたため、魅力的な会社であるという噂が広まり、弊社を名指しして「募集していませんか」と工業団地に常に問い合わせが入っていたというのです。
しかし、状況が変わり悪い噂が出回ってしまってからは、大きく状況が変わってしまったことを私自身が体感しました。
自社の状況及び、自社を取り巻くベトナムの労務条件、周囲企業の動向など情報を客観的に分析した上で、4項目の視点から自社の強みと弱みを把握し、戦略的に対策を行い、会社の魅力を自信を持って表現できる様にすることが重要です。
今回の記事でお伝えしたい内容は、以上です。
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