大阪市のある小学校には、子供たちに教えるための教材を自作してユニークな授業を次々に打ち出す名物先生がいると、新聞記事で知りました。
その先生が作った教材の中に、小学校で子供達が自発的・主体的に考え、行動できるようになるための教育プログラムもありました。それは、その先生がリッツ・カールトンホテルのホスピタリティについて書かれた本を読んだことがきっかけで、そのプログラムを考えるようになったそうです。
そして、その独自プログラムを実践することで、実際に子供達に変化があったそうです。
自分で考えて行動する、相手の気持ちを思いやる、分からないことは友達と相談しあって考える、困った時に助け合う、などの行動ができるようになっているというのです。
記事ではそのプログラムの詳細はわかりませんでしたが、リッツ・カールトンのホスピタリティというキーワードの中に何か秘密があるに違いないと思い、本書を手に取りました。
本書の概要
おもてなしの本質である「人の心に寄り添い、相手の思いを感じる力」はどのようにして磨くことができるのか? 前リッツ・カールトン日本支社長である著者、高野登(たかの のぼる)氏による実際の体験を元にして綴られた、リッツ流おもてなしを身につけるための極意書
おもてなしやホスピタリティの本質というと難しい印象を持つかも知れませんが、本書を読めば、それは特別なことではなく自分の気持ち次第で日常の中でも磨くことのできることであり、それが自分の人生の質を高めることに直結するのだということに気がつくことができます。
おもてなしの感性を磨き、輝かせるために
本書では、一流のおもてなしを身につけたいと思う人に向けた、リッツ・カールトン流の極意がたっぷり詰め込まれています。
読んでいて、あることに気がつきました。
自分の心を鍛えること、働き方・生き方の軸を鍛えること、思いを伝える力を鍛えること、一流と呼ばれる感性を身につけるためのこと、こういった本書に書かれていることの全てに対して共通して言えるのは、全て自分自身を高める、ということにつながって行くということでした。
小手先のサービステクニックなどではなく、思考のベクトルを自分の内面に向け、自分自身をたかめ、磨くことでしか、得ることができないものなのだと分かりました。
本書で気になった項目について、少しご紹介します。
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「相手のために」ではなく、「相手の立場に立って」
「相手のために」という思考は、知らず知らずのうちに上から目線の思考へと偏ってしまう危険性があります。けれども、「相手のために」という言葉を「相手の立場に立って」と置き換えることで、無意識のうちに生まれていた上から目線は消え去ります。
本当に相手のためを思うのであれば、相手の立場、相手の目線に立って考えるしかないのです。
そしてそのためのキーは、「自分のものさしを捨てる」ことだと著者は言います。
何か物事をみて感じることは、普通は誰でも「自分のものさし」に照らし合わせてみています。
ふとした時に、「これは誰の目線で見ているのだろう?」「相手のものさしは何を見て、何をはかろうとしているのだろう?」と考えること、自分のものさしだけでなく、いろいろな視点から眺めて考える時間を意識して作ることで、相手の立場に立って考えることが身につくようになります。
また、相手に自分の気持ちを伝える時の言葉を大切に使うことの大切さについても述べられています。何気なく使った言葉で、自分の意図に反して相手を攻撃してしまうことがあるからです。
これについては、自分自身の胸に手を当てて振り返ると、思い当たることがたくさんあります。
仕事の中で同僚に向けて投げかけた言葉、家で家族に向けて放った何気ない一言が相手を傷つけてしまうこと、私もよくあります。
そして思い返せば、そんな時は大抵「自分のものさし」だけを持って話している時のように思われるのです。
自分のものさしは、それが自分の軸となるものですから、それはそれで大切なのですが、それを相手に(無意識のうちに)強要してしまっていないかどうか、時々立ち止まって考えることの大切さを本書から学びました。
リッツ・カールトンが一流な理由
著者はいくつかのホテルで仕事をした経歴を持たれていますが、リッツ・カールトンの環境について、このように述べていました。
リッツ・カールトンがそれまでの職場と大きく違っていた点は、
「仕事をすることの意味は何かということを、組織的に継続して考えさせる仕組みがあった」
ということです。
ホテルに来てくれた人(例えそれが宿泊客でなくても!)に喜んでもらえるために「私は」何ができるだろうか、ということを一人一人が深く考えている、
スタッフひとりひとりが、人の心に寄り添い、思いを感じる力を磨くために日々鍛錬している、
全世界にある全てのリッツ・カールトンで共通で使える言語(言葉の定義)を持っており、ホテルマンとして目指す姿に対しての姿勢がぶれない、
リッツ・カールトンというのは、そういう集団であり、だからこそ一流のホテルとして世界中の人から認められているのだと分かりました。
全世界規模で全ての組織一人一人に至るまでそんな状態が浸透しきっている組織というものは、どれほどに素晴らしいものでしょう。そんな組織が力を合わせたなら、一体どんな素晴らしい成果が上がるでしょう。
相手を思いやるということの奥深さと素晴らしさ、
おもてなしを追求することは自分の感性を高めることと一体であり、自分自身の人間形成へとつながって行くということ、
そんなことを教えてくれる本でした。
以上です。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
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