今回紹介するのは、森博嗣(もり ひろし)さんの小説、封印再度。
推理小説です。
推理小説、最近はめっきり読まなくなってしまっていたのですが、元々私が本をまともに読むようになったきっかけは推理小説でした。
もっと遡ると、スーパーファミコンのゲームソフト「かまいたちの夜」というのが、そのキッカケです。「かまいたちの夜」はいわゆるノベルゲームと言われるもので、小説を読み進めるようにして物語を進めていくゲームです。途中で分岐点が色々とあって、その時その時に選ぶ選択肢によってエンディングが変わっていくという、何度も楽しめる要素を持ったゲームでした。
で、この「かまいたちの夜」はスキー場のロッジをステージに、吹雪の夜に発見される死体の謎に迫る、というもので、ゲームながらも想像力を掻き立てられる凝った演出で、すごくドキドキしながら遊んでいた記憶があります。
このストーリーがとても面白くて、誰がこんな物語を考えるのだろうと見ると、作家の我孫子武丸さんでした。そして、我孫子武丸さんの推理小説をキッカケにして、綾辻行人さん、島田荘司さん、歌野晶午さんなど、有名なシリーズ物の小説を漁るようにして読んでいました。
推理小説で1つ重要なのは、登場人物をどれだけ早く覚えれるか、ということがあると思っています。大抵の推理小説は、冒頭に登場人物と関係性について説明のページがあるので、名前を覚えるまで頻繁にこのページに戻って来ることになります。
日本人の名前ならまだ頭に入りやすいのですが、外国の推理小説だとカタカナ名が妙に頭に残りにくく、物語中盤になっても「えっと、誰だっけ」と冒頭に戻ることになるのもしばしば。
そういうことで、一度にたくさんのカタカナ名を覚えることに苦手意識があった私は日本人の推理小説を多く読んでいました。
今回も同様に、冒頭に人物紹介のページがありましたので、案の定、何度もそのページに戻りましたが、その感覚が妙に懐かしさを感じさせてくれました。
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封印再度のあらすじ
旧家に伝わる家宝、天地の瓢(こひょう)と無我の匣。
無我の匣は施錠され、鍵は天地の瓢の中に。しかし、その鍵は瓢の口より大きいので取り出すことはできない。先代の死と、家宝の謎に迫る中、新しい事件が。
無我の匣は本当に開けることができるのか。そして、不可解な事件現場はどのようにして作られたのか。
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私は推理小説を読みながら、なんとか作中の主人公より先に謎を解けないものかと考えるのも好きなのですが、まず解けたことはありません。そして、今回もやっぱり解けませんでした。
一体こんな謎をどうやって解決できるのだ、と頭の中がクエスチョンマークでいっぱいの状態から少しずつ謎が解けていく、「そうだったのか!」という快感が気持ちいい。
こちらの作品は1997年に発表されたので、色々と出て来る言葉が時代を感じさせてくれます。当時はまだ今のようなインターネット環境はなかったので、パソコン通信という言葉が普通に出てきます。メールを閲覧するためにネットに接続するのもダイヤルアップです。そういう単語を見つけながら、「あぁ、そうだったなあ」と当時を思い出して読むのも、1つの楽しさがありました。
また、タイトルで封印再度とWho inside となっており、これも非常に大きな意味を持っています。同じ音を出すけれど、違う意味を持った言葉というのが1つの鍵になっていて、非常に面白い。こういう色々な伏線が張り巡らされていて、それがある時点で一気に明るみに出た時の快感がなんとも言えないですね。
なぜか登場する人物への感情移入はあまり出来なかったのですが、久しぶりのミステリーで、謎に迫るドキドキ感を存分に楽しめる一冊でした。
以上です。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
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